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今回の整備内容は2つ。
1.リアのプロペラシャフトとデフの繋ぎ目からのオイル漏れ
2.サイドブレーキシューの交換
この内容で、請求書(工場によっては納品書)を考察してみよう。
今回は『一般整備』という事で『車検整備』の請求書よりずっと簡単だ。
(『車検整備』の請求書の考察は、また、機会があれば…)
自動車整備(以下、自整)の請求には、二種類の価格が分けて表示される。
一つが『部品代』でもう一つが『工賃』だ。

まず、『部品代』は非常に分かりやすい。
部品一個一個に単価があり、それに個数を乗じて金額を算出する(自整に限らず、至極一般的なことだ)。
なぜなら、使った部品は明らかだし、部品代も普通は明らかになっており、部品販売店(以下、部販)に行けば個人にも売ってくれる(定価の場合が多い)。
今回の請求書には載っていないが偶に『ショートパーツ』という部品が載っている場合がある。
これは、『ショートパーツ』という部品があるわけではなくて、ちょっと使ってお代は貰いたいんだけど具体的に書き難い場合に使われる常套句だ。
例えば、グリス代、ちょこっと足したオイル代、脱落していた小さいネジ/ファスナを入れた、等々、こまごました物をまとめて『ショートパーツ500円』みたく概算で請求される(所謂、どんぶり勘定、小さめの…)。

問題は『工賃』だ。
これは、どうやって算出されいるのだろうか。
良く分からないからなんか損をしてるとか、ぼられてるみたいな感情を持ってしまうのではなかろうか。
一応、日本自動車整備振興会連合会(以下、日整連)から指針が出ており、それに従うようになっている。
しかし、実際には各工場の判断に委ねられていて、指針通りに請求される場合はまず無い。
なので、同じ車を同じ整備内容で違う工場に出した場合、請求額が同じ事はまず無い。
だから、自分は損したとか、得したみたいな話が出てくるわけだ。
じゃあ、日整連の指針がどうなっているかだ。
実は、『部品代』と同じ考えで 単価×数量 のように算出する。
バイト代なら 時給×時間 となるところだ。
しかし、言葉がちょっと違う。
時給の事を『レバレート(レバーレート)』、時間の事を『標準作業点数(以下、点数)』という。
したがって、『工賃』=『レバレート』×『点数』で算出される。
じゃあ、『レバレート』はいくらか?
これが、工場によってかなりいい加減なのである。
\7,000〜8,000- 位が普通ではなかろうかという感触である。
しかし、\6,000- で計算している工場もある。
該当作業を担当した整備士(以下、メカニック)によってレバレートを変えている(熟練工は高い、みたいな…)工場もある。
更には、整備する車によって変えてる(国産車は\8,000-、高級外車は\12,000-、みたいな…)工場もある。
ま、レバレートはこんな感じだ。

お次は『点数』
これは、『日整連の点数表』という俗称の資料(正式名称は、自動車整備標準作業点数表)が販売されている(ここに出てました)。
内容だが、縦が作業項目、横が車種の夥しい(おびただしい)量のマトリックス表だ。
ビグロン(UBS69GW)の一般整備の点数をいくつかピックアップしてみよう。

作業番号 作業項目 点数
1090 Vベルト全数取替 1.0
1480 タイミング・ベルト取替
(整備追加点数A/C付き)
(整備追加点数P/S付き)
4.1
0.2
0.2
2210 ウォータ・ポンプ取替
(整備追加点数A/C付き)
(整備追加点数P/S付き)
4.6
0.2
0.2
3100 オルタネータ取替
(整備追加点数A/C付き)
(整備追加点数P/S付き)
1.5
0.7
0.3
4740 リヤ・ディファレンシャル・ドライブ・ピニオン・オイル・シール取替 1.7
5090 フロント・ドライブ・シャフト・インナ・ブーツ取替(1個) 4.2
5480 フロント・ショック・アブソーバ取替(1本) 0.7
6110 タイロッド取替(1本)(含 トーイン調整) 1.1

なので、例えば、フロントショックを2本購入して、取り付けをお願いしたところ、『工賃は1万円になります』と言われたとしよう。
貴殿はどう考えるか?
『1本の点数が0.7だから、2本で1.4。レバレートが\8,000-とすると…\11,200-か…。自分やるのもかったるいし、頼んじゃお!』
『1万か…2本で点数が1.4だからレバレートは…\7,143-か…。たかぁ…自分でやるか…』
貴殿の自由だ。

これで、一般整備の請求書のだいたいの見方が分かったと思う。
じゃ、今回のビグロンの請求書の考察だ。
工賃が2行あって \7,000- がサイドブレーキシューの交換、\10,500- がオイルシール交換、それぞれの工賃だ。
ここで、気付いたんだが、UBS69のサイドブレーキ(ドラム)シューの取替が点数表に載ってない…
『7270:リヤ・ディスク・パッド取替(1台):0.9』はあるんだが…、ドラムインディスクって事を知らないようだ<日整連
仕方ないので、似た車格の『リヤ・ブレーキ・シュー取替:1.8』を利用しよう。
(こういう事が日常茶飯事なので、だんだんどんぶり勘定になっているのも理解できる)
オイルシール交換は上表の『4740:リヤ・ディファレンシャル・ドライブ・ピニオン・オイル・シール取替:1.7』だ。
したがって、今回の作業点数の合計は 1.8 + 1.7 = 3.5 だ。
工賃合計は、\17,500- だから、17,500 ÷ 3.5 でレバレーとは、ピッタリ\5,000-だ。
はっきり言って安い…、お得といって良いでしょう。
正直、工賃だけで2万超は覚悟してただけに嬉しい。
(実際にこの作業内容で 3.5hもかかる訳ねぇだろぉ!って突っ込みもアリ)

請求書を見てただ漠然と損した、得した言うんじゃなくて、こんな風に考察してみるとなかなか楽しいものだ。
本当にぼられたときは、工場に抗議できるしね。
今回のように作業内容が単純明快でインタラクティブな作業が発生しない場合は良いが、事故等の整備は…やっぱりどんぶりだ、鈑金はまた違うしね。

あと、結果として点数の少ない作業で整備できたんだが、その整備箇所を発見するために半日費やした…みたいなケースは日整連の指針通りじゃ大損なのだ。<工場
そういう正当なお代は支払われるべきでしょ〜!